キミから「好き」と、聞けますように。
ついに、約束のカラオケに行く日が来てしまった。
……それにしても、本当にこれでよかったんだろうか。
あぁー、あの時の俺ってマジ気持ちわりぃ。
幼なじみでもなければ親友とも言いがたい女子に対して、カラオケで歌ってほしいなんて頼むとか。
待ち合わせ場所に、まだ温森はいない。
1人でこんなにソワソワとするだなんて、周りから見たらダサいだろうな。
「東條くん」
鈴を振るような声。
振り返ると、そこには当然私服姿の温森だった。
袖がふんわり膨らんだ白いシャツの上に、黒いワンピースを着ていて、シンプルかつ可愛いデザインが、温森に似合いすぎて、俺はこのまま失神するんじゃないかと思った。
鳴いた胸の声だけじゃなくて、ほかの鈴李の曲も歌ってくれて、その時の温森の表情ときたら、今までに見たことのないくらい生き生きとしていて、少し切なく歌ったり、笑顔で歌ったり、歌詞に感情を込めているのが分かった。
温森が歌い終わると同時に、俺の両手は無意識にパチパチと音を鳴らしていた。
その音に反応して、茶色の瞳を大きく見開きながら振り返る温森。
「へえ、上手いじゃん」
「ほんと……?」
「うん。温森さ……めっちゃ歌うの好きだろ」
「えっ……?」
やっぱり、歌が好きなんだな。
バレたのが恥ずかしいのか、温森の顔がちょっぴり赤くなっている。
……いや、可愛いかよ。