キミから「好き」と、聞けますように。

「紗雪!」



朝のホームルームが終わると、わたしの名前を呼ぶ可愛い声が聞こえた。



「ひな!」



ひなこと、長嶺 陽葵(ながみね ひなた)。


大きな瞳をニコッとさせて、いつもわたしに話しかけてくれる大切な親友。


肩まで届くその黒い髪は、いつもユラユラと動かしながらニコニコしているひなは、まるで踊っているみたい。


ダンス部だけあって、ひな自身も踊りが上手なのだ。



「こっち行こ」



ひなは、わたしが聴覚情報処理障害であることも知っていて、いつも人気のない場所へわたしを連れて行って、2人だけの時間を作ってくれる。



「昨日の授業の6限でやったやつ、紗雪は分かった?」



「あぁ、昨日の数学? ……んー、新しい単元だから、よく分かんないよ」



わたしが答えると、移動教室から戻ってきたのか、他のクラスの人達が喋りながら廊下を歩いていく姿が見えた。


その間に、ひなが何か喋り出したみたいだけど、わたしにはちっとも聞き取れない。



「ご、ごめん。よく聞こえなかった」



他のクラスの人達が教室に入って行ったところで、わたしはひなにそう言った。



「ああ、紗雪は勉強そんなに苦手じゃないじゃん?」



わたしが聞き取れない間に、ひなはそう褒めてくれたみたいだった。


わたしがこうやって聞き取れなくても、ひなは他の人と違って絶対に怒らない。




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