キミから「好き」と、聞けますように。
寛太side
温森の様子がどうもおかしい。
映画を誘っただけで、あんなに震えて拒否をするだなんて。
映画が好きじゃない人もそりゃあ中にはいるだろうけど、それだけであんな反応になるだろうか。
俺は今日の温森のことを思い出しながら、今は兄貴の家で過ごしている。
「かんにいに、どうしたの?」
七菜が目をまんまるにさせながら、俺を見上げていた。
「いや、ちょっと色々あってな」
「そのえいがのチケット、なんで2まいなの?」
俺が手にしている、そのぺらぺらと動いたチケットが2枚なのに気づいて、目をパチパチと瞬きする七菜。
「友達とでも見に行こうかなって」
「え、だれだれ? うーん、さゆきちゃん!?」
「ち、違う違う。他の友達」
「えー」
七菜はすっかり、温森を気に入ったんだな。
まあ、自分の好きなクレープ屋の娘だからかもな。
それにしても、七菜は相変わらず人見知りってもんをしない。
幼い頃から、初対面の俺に抱っこされても泣かなかったし、ここまで人見知りをしなさすぎるのがなんだか危なっかしいくらいだ。