キミから「好き」と、聞けますように。
「おお、寛太に七菜。ここにいたのか」
「あ、とと」
「兄貴」
七菜の父親で、俺の10歳年上の兄貴がやってきた。
兄貴がベッドの端に座ったことで、七菜も隣に腰掛ける。
兄貴は、普段会社で働いている普通のサラリーマンだが、学生時代は勉強もスポーツもできていた兄貴は、学生時代はかなりモテていて、いろいろな女性からラブレターを渡されたりしていた。
俺もいろいろなスポーツのコツを、兄貴からは教わった。
兄貴はどんな女性からアプローチされても、全く興味を示さなかったが、七菜の母親にあたる今の奥さんと出会ってから、変わった。
奥さんのこととなると、そりゃあもう頬が緩みっぱなしで、娘ができてからは家族にぞっこんだ。
「ん? 映画のチケット? 友達とでも見に行くのか?」
俺の手に握られている、2枚のチケットを見ながら兄貴がそう聞いてくる。
「まぁな」
「七菜ー、どこにいるの?」
遠くから、兄貴の奥さんの声が聞こえてくる。
「かかー! ここだよー!」
七菜はベッドからぴょん、と降りて、自分の母親の声がする方へと走っていった。
「なぁ兄貴。女子が映画を拒むって、相手が相当嫌いじゃないとならないか?」
「は?」