キミから「好き」と、聞けますように。

「まあ、何か映画に対するトラウマでも抱えてんじゃねぇか?」



兄貴は自分の膝に頬杖をつきながら、そう話す。



「トラウマ、か」



映画。
トラウマ。


映画のことでトラウマを抱えるって、どんなものだ?


俺は温森じゃないし、きっとトラウマの詳しい内容は本人にしか分からないだろう。


……強いていえば、長嶺なら知っているだろうか。


とはいいつつ、俺はダンス部じゃないからあそこの部活に入っているやつと話すことなんて全然ない。



「お前……その子、好きなんだな」



唐突に兄貴に言われて、俺はこのまま飛び上がっちまうんじゃないかと思った。



「え!? ちょ、兄貴……」



「ははっ! 兄弟だから、そこら辺に嘘をつくなよ。別にお前がその子を好きといっても、俺は誰かわかんねーのに」



兄貴は、さっきまで真剣に俺の話を聞いていたのに、今じゃずいぶん愉快そうだ。

……ったく。途中まで相談に乗ってくれてたっていうのに、いつの間にか恋バナみてぇになってるじゃねぇか。


誰も好きなんて……言ってないんだけどな。




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