キミから「好き」と、聞けますように。
「あらあら、いらっしゃいませ」
クレープ屋まで辿り着くと、温森の母さんが俺と七菜にニコニコしながら声をかけてくれた。
しかも、そばでは温森まで一緒だったし。
「さゆきちゃーん!」
温森の姿を見ては、咄嗟に走り出す七菜。
「七菜ちゃん、今日も来てくれたんだね」
自分の母親に似て、包み込むような優しい笑顔で七菜の相手をしてあげる温森。
「ほーらね! やっぱりいたよ!」
「ん?」
七菜が言った意味を当然よく分かっていない温森は、キョトンとしている。
「ここにくればさゆきちゃんにあえるって、ななはいったのに、かんにいにってば、いってもあえるかわかんないって、いったんだよ!」
「こら、余計なことを言わない」
油断していると、本当に七菜は何を口走るか分かんないよ。
よりによって、バラしてほしくない事を言うんだから気を抜く暇がない。
「あはは、そうだったんだぁ……」
ほら、温森は困ってるし。
「えっと、東條くん。ごめんなさい……。映画のこと」
俯き加減で、俺に謝る温森。
「ああ、俺こそ悪かったな。映画、そんなに嫌なんて分からなくて。俺が浅はかだったよ」
「映画が嫌いというか……」
そう言った後、温森は黙りこくってしまった。
「いいよ、話せるとこからで」
「……うんっ」
俺の言葉を聞いて安心してくれたのか温森は、ありがとう、と言ってから顔を上げた。
「……わたしね」
目を閉じた後に、温森は勇気を振り絞った様子を見せながら、口を開いた。