キミから「好き」と、聞けますように。

「ちょ、聴覚情報処理障害なの」



「聴覚……なんて?」



単語がいくつも重ねたような病名だけど、詳しくは全然知らず、俺は思わず戸惑った。


そりゃあそんな反応にもなるよね、と温森は力無く笑って、話を続けた。



「聴覚情報処理障害……APDって言われることもあって、聴覚は正常なのに脳が原因で聞き取ることが難しい障害なの」



「つまり言うと……声は聞こえてるけど、聞こえる言葉はごちゃごちゃしてる時が多いってことか」



俺が話をまとめると、温森はコクンと頷いた。


だけど、ごちゃごちゃして聞こえる割には意思疎通が全然できているように思えるのだけど。



「でも、今は結構普通じゃね?」



「他の人の話し声とか、音とかもないからね。もしあったら、聞こえづらかったかも。2人だけの時は、聞き取りにくいことはほとんどないんだ」



「そうか……」



「ごめんね、難しいこと言って。困らせちゃったよね」



「いや、いいよ。もしかして、それが映画と関係あるのか?」



俺が探るように尋ねると、温森は細い体をビクッとさせた。


……やっぱり、か。

兄貴の言っていた、トラウマ、というのが関連していそうだな。




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