キミから「好き」と、聞けますように。

温森は、その障害のせいで昔ひどく苦労したことを話してくれた。


小学生の頃に、いじめにあっていたこと。
何回も聞かないと理解できないことで、女子からは陰口を言われ、男子からは突き飛ばされたこともあったこと。


先生からも、よく責められていたこと。



「だから、今じゃ聞こえないっていうのが怖くって……」



鈴を振ったような、温森の声が震えていた。



「聞こえづらい声ってあるから……。高めの可愛い声をした女の子とか、早口で喋る男の子の言葉とかは、聞き取れないんだ……。それで、だから映画でも聞こえにくいところあるって思うと……」



「そういうことだったのか」



やっぱり、トラウマか。



「せっかく誘ってくれたのに、本当にごめんなさい」



「温森は何も悪くねぇんだから。本当にごめんな、温森がそんな過去を背負っていたことも知らずに、1人でいろいろと……」



温森は申し訳なさそうだけど、これに関しては完全に俺が悪かった。

俺が無知なのが原因で、温森のトラウマを深くさせてしまったら、俺はどうやって償えばいいのだろう。




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