キミから「好き」と、聞けますように。
結局あの映画は、兄貴と一緒に見ることとなった。
いい話ではあったが、俺的には映画の予定はこんなはずじゃなかったから、大満足という結果には至らなかった。
俺はなるべくそのことを顔には出さないようにしていたのだが、兄貴にはバレちまったようだ。
「ずいぶんと浮かない顔だな。そんなに女の子と一緒に見たかったのか?」
「別にそんなんじゃねぇけど」
「そういえば、分かったのか? 彼女が、映画に行きたがらない理由っていうのは」
彼女って……。
まあ、兄貴は普通に女子を意味するという使い方をしただけなんだろうけど、あんな風にからかわれたのでどうも鼻につく。
「それがさ……」
俺は、温森が持っている、聴覚情報処理障害について兄貴に話した。
あんまり人が持っている障害を他の誰かに言うことには抵抗があったが、兄貴なら信頼できると思ったので、俺は思わず話してしまった。
「ふーん。まあ、世の中色々あるわな」
兄貴だって知らないような障害を話されたと思うのに、だいぶ落ち着いた様子でその言葉を返してきた。
「だけど、なんとなくだけどその女の子、お前を予想以上には恨んでないと思うけどな、俺は」
何も知らないくせに、と思ったが、できれば兄貴の言った通りであってほしい、と願う自分もいた。