キミから「好き」と、聞けますように。
「温森……。その本って……」
ゴールデンウィークが終わった頃、教室に入った俺は温森が持っていた本を見て、固まってしまった。
「あっ、気づいた?」
温森が自分の席で読んでいたのは、俺が話した映画の原作となった本だった。
「こないだ、東條くんが誘ってくれた映画の本の方を買って、どんな話か知ろうと思ったんだ」
温森はそう言った後に、えへへ、と可愛らしく笑った。
「そ、そうか……」
俺が勧めた映画、全く興味がなかったわけじゃなかったんだな。
「今ね、主人公と彼女がこういうことをしているところまで読んだよ」
温森はそう言いながら、俺に本のページを見せる。
「ああ、このシーンか!」
俺は思わず、温森が手にしている本に食いついた。
「おわっ!!」
「あいたっ」
……俺が食いついたりしたのがバカだった。
俺が視線を戻そうと思った拍子に、自分の頭と温森の頭がぶつかってしまったのだ。
「わ、わりぃ。大丈夫、だったか?」
温森の太くて長いまつ毛が縁取られた、二重まぶたの目。そして、薄いピンク色の唇。
温森の顔のパーツがどれもひとつひとつ、かなり近く感じてしまい、俺はなぜだか心臓の音がバクバクとすごくうるさくなった。
「う、うん……。大丈夫……!」
温森は、あの時と同じだった。
カラオケの時と同じくらい、顔が赤かった。