キミから「好き」と、聞けますように。
「温森。時間もったいねぇから、行くぞ」
「あっ、うん……」
少し強引に、わたしの二の腕を掴みながら速足で歩く東條くん。
「おいお前ら待てよ!」
後ろの戸田くんの声をシカトしながら、東條くんは部屋に入って行った。
ドアをバタンと閉めても、東條くんはずっと口を結んでいる。
「お、怒った……?」
わたしはおずおずと聞いてしまったけれど、そりゃあ怒るよね、としか思えなかった。
あんな喧嘩に巻き込まれたくないよ、誰だって。
「別に」
そう言っている割には、すごく怒っているように見える。
怒っているなら怒った、と言ってほしい。
余計に怖い。
「うーん、嘘かな」
そう言った東條くんは、ケロリとした表情になっていて、さっきまで怖い顔をしていたのが嘘みたい。
「え?」
「怒ってはいる。でも、それは温森に怒った訳じゃねぇよ」
「えっと……」
「温森に怒んないのは当たり前だろ。温森、なんも悪くないのに」
そう言ってくれるのは嬉しいけれど、複雑だった。
何も悪くないといえば、違う。
そう言ってしまえば、東條くんはもっと悪くないんだ。
東條くんは何も悪くないし、何も関係ないのに、あんな風に怒鳴られるなんて。