キミから「好き」と、聞けますように。
一応、カラオケの部屋が使える時間までいたのだけれど、ムードはとてもいいとはいえなかった。
別れる時も、東條くんは怒ってはいないようだったけれど、わたしの気持ちは時間が経つにつれ、下がっていくだけでどうしても上がらなかった。
「温森さん!」
遠くから、誰かがそう呼びながら走ってくる。
……あっ、大沼くんだ。
「悪いな、温森さん」
追いついてきた途端、息を整えながら大沼くんはわたしに謝る。
「うん、別に大丈夫……! あんなこと、小学生の頃にされてて、もう慣れちゃってるから」
大沼くんを心配させたら良くないので、わたしは言ったが、これ以外の言葉選びがどうも見つからなかった。
「でも、どうして大沼くんと戸田くん、一緒にカラオケに……」
「前に野球やってた奴らが久しぶりにあのメンツで集まりたいっていうから。できるだけ全員参加って言われて、行くしかなかったんだよ。お互い来るなんて思わなかった。正直あいつがいて嫌なんだけど……」
戸田くんと大沼くん、今でもこんなに嫌い合っていたんだ。
「でも、温森さんに会えてちょっぴり良かったよ」
「え、あっ……。そっか……。ありがとう」
笑顔では言ってくれたけれど、なんでわたしに会えたことがよかったんだろう。
別にわたしは野球なんて全くやらなかったし、大沼くんとそんなに関わる機会も多くなかったと思うけど。