キミから「好き」と、聞けますように。

「東條くんって映画好きなの?」



「俺? 結構好きだよ。でも、映画館っていうのは、こう見えていろいろ考えないといけないんだ」



「いろいろ?」



思わず、わたしは目をぱちくりと瞬きをして聞き返した。



「ほら、俺、こんな身長だから」



ああ、そうか。
確かに、東條くんは高校3年生にしてはすごく背が高い。

東條くんより背が高い人は、うちのクラスでも一握り程度だと思うし、当然彼はいろいろな先生の身長も抜かしている。

背が高い東條くんが映画館の席で前にいたら、後ろにいる人が見えなくなっちゃうよね。


東條くんは優しいから、そういうところにも気遣うんだ。
本当に、いい人だなぁ。



「お父さんお母さんも背高いの?」



「母親は普通、父親がすっげー高いから、それだよ」



「そうなんだ」



「温森は、普通? 小さくはないよな……」



「うん、お父さんもお母さんも背の高さは普通くらいだから」



わたしの身長は、159センチ。


厳密に言うと、女子高生の平均よりもほんの少しだけ高めなんだけど、周りを見ると160センチを余裕で超えている女の子も少なくないため、あまり高く見られない。




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