キミから「好き」と、聞けますように。
「寛太ー、そっちにいる? 暇なのであれば店手伝って」
奥の方から声が聞こえてきては、足音が近づき、女の人がやってきた。
東條くんのお母さん、か。
お母さんの身長は、高くも低くもない、普通だって言っていたな。
東條くんは、やっぱりお母さんの身長をゆうに超えていることが、パッとみて分かる。
「あら、お客さん?」
東條くんのお母さんは、目を丸くした。
「ええっと、わわ、わたし、温森 紗雪といいますっ……!」
「七菜や寛太の、お知り合い?」
「俺のクラスメイトだよ」
「ななね、かんにいにとクレープ買ってたら、さゆきちゃんにあったの!」
「あっ、母が働いているクレープ屋さんに七菜ちゃん達が来てくれたので……」
わたしが説明すると、東條くんのお母さんはなぜか目をキラリと光らせた。
「あらやだ、七菜のお気に入りのクレープ屋さんのことは知っていたけれど、あなた、あそこのお嬢さんだったの!?」
「はい。すみません、急に……」
「やだあ、大歓迎よ。全く寛太ったら、女の子連れてきたのなら言いなさいよ。お母さん、おもてなしができないでしょう?」
「いや、別に俺は……」
「紗雪ちゃん、おはぎとお茶でいいかしら?」
「は、はい!」
それにしても、東條くんの家は和菓子屋さんだったのね。
東條くんのお母さんは優しいからああ言ってくれたんだろうけど、本当に良かったのかな。
完全に、お仕事の邪魔になっているような気がしてならなかった。