キミから「好き」と、聞けますように。
東條くんのお母さんは、真っ白な法被をひらひらと動かしながら、テキパキと行動し、おはぎとお茶を持ってきてくれた。
「さあどうぞ。じゃあ、私はお客さんの相手をしなくてはいけないから、戻るわね」
「は、はい。ありがとうございます」
そう言った後に、東條くんのお母さんは笑顔を崩すことなくそそくさとカウンターへ向かった。
「いただきます……!」
わたしは、おはぎをパクッと口に入れた。
その途端、あんこの甘い味が口いっぱいに広がる。
「さゆきちゃん、おばあちゃんのおはぎ、おいしいでしょう?」
……そっか。
七菜ちゃんにとっては、東條くんのお母さんは“おばあちゃん”なんだよね。
当たり前のことなのに、なんだか不思議な気分になってしまった。
「うん、すっごく美味しいね。七菜ちゃんも、おばあちゃんのおはぎ好き?」
「うん! さゆきちゃんのおかあさんのクレープと、おばあちゃんのおはぎって、ぜんぜんちがうのに、おなじくらいおいしいの!」
「クレープと同じくらいかぁ……。ふふっ」
わたしと七菜ちゃんがそう言っている間、なぜか東條くんは、おはぎを食べているものの、ずっと黙っていた。