キミから「好き」と、聞けますように。
「紗雪、今年もお菓子屋さんになりたい的なことを書くの?」
東條くんの家の和菓子屋さんで過ごしてから、数日が経過した学校の帰り道に、ひなが唐突に聞いてきた。
「書くって?」
「七夕だよ、もう7月。笹が飾られてるよ」
そうか、あっという間に7月だ。
ああ、そういえばわたし、七夕には小さい頃も『おかしやさんになれますように』と書いていて、そこから毎年同じようなことを書いていたんだった。
「まあとりあえず、わたし達もお願いしていこ!」
「えぇっ……?」
ひなは、わたしの手首を掴んで笹の方へ走っていった。
ひなは、オレンジの短冊に『大学に受かりますように』と書いて、笹に飾り始めている。
大学、かぁ。
わたしも進路関係で、『パティシエコースに入れますように』と書こうかな。
毎年、自分の夢ばっかり。
けれど、なんだかそう書こうと思えば思うほど、なぜだかペンが進まなかった。
『あの人から「好き」と、聞けますように』