キミから「好き」と、聞けますように。
翌日。
わたしは、机の近くに置いてあるコップを手に取った。氷が入ったお茶を飲みながら受験勉強をしていると、スマホが着信メロディを奏でた。
ロック画面にある、電話をかけてきた人の名前を確認すると、ひなからだった。
『紗雪〜、お願いなんだけどさ。古典のところ、全然わからないから教えてー』
「うん、いいよー」
『この、ワークの38ページの部分なんだけど……。問3番が難しくて……! 紗雪、できたー?』
「38ページ? あぁ、これか。ほら、これは連用形が使われてて、意味とか見返してみれば解けると思うよー」
古典のワークを取り出し、38ページを確認するとわたしはもう既に解いていたところだった。
……そういえばわたしも、ここは意味や活用を見ないと分からなかったな。
『ちょっと待ってて……。あー、なんか分かったかも! ありがとー、紗雪。あ、ところでさ』
「ん?」
『夏休み中、東條くんに会わないの?』
「えっ!」
思わず、わたしは椅子に座ったまま上半身をピシッと伸ばしてしまった。
「昨日会ったけど……」
『えー、紗雪のことだからさぁ、お母さんの働いてるクレープ屋さんとかでしょ、絶対』
図星、だ。
だって、その他に一緒にいられそうな場所なんてないんだもん。
その上、東條くんは頭がいいんだし、わたし達はもう高校3年生で受験もどんどん近づいていっているというのに、そんな暇はない。