キミから「好き」と、聞けますように。
寛太side
『寛太、新しいお友達が引っ越してきたんですって』
これは、俺が今の七菜と同じくらいの時だったこと。
母親が、ちっちゃな俺を呼んだ。
玄関まで行くと、ストレートボブにした幼女と、その子の母親がニコニコしながら立っていた。
『さとみしあんです!』
まるで子役のように、初対面の俺に対しても彼女は口角を上げて、自己紹介をした。
『ほら、あんたも』
『とうじょうかんたです』
急かすように母親に言われ、俺も自分の名前を彼女に伝えた。
キラキラしたものが好きなようで、彼女の指輪には手作りと思われるビーズの指輪がいくつもはめられていた。
彼女の母親が言うには、彼女は生まれたばかりの頃に、原因不明の難聴と診断されていたようで、常に補聴器をつけていた。
それが、幼い紫杏。
けれど紫杏は、耳にハンデがあることなんてなんでもないという風に、笑顔を輝かせていた。