キミから「好き」と、聞けますように。
話の趣旨がいつの間にか変わり、ワアワアと騒ぎ立てる奴らに、紫杏は眉間にしわをきゅっと寄せた。
『違うよ、あたし達は幼なじみなの!』
紫杏が立ち上がった瞬間、ガタンと音が鳴った椅子。
『へぇー、幼なじみ。そんなことでごまかしちゃうんだぁ』
『彼氏くんは否定していませんけどー?』
集団で、紫杏をバカにすることをやめないその卑怯な奴らに、俺は怒りが止まらなくなった。
『つーかさ、それって俺が聞きたいことでもあるんだけど』
また騒ぎ立てる前に、すかさず俺はそう男子達に言葉を投げた。
『お前らこそ、紫杏に構ってもらおうとして。そんなに紫杏が気になるのかよ』
『バカ、ちげえよ!』
『耳にアクセサリーつけてて、ムカつくんだよ!』
意味のわからないことを言って、その男子達は逃げていった。
まさか、こんな質問の返し方をされると思わなかったんだろうな。
怒りが完全に消えることはなかったけれど、あの時はほんの少しだけいい気味だと思ってしまった。