キミから「好き」と、聞けますように。

紫杏は、補聴器の説明は何もしていなかった。


おそらく、察していたんだろう。

自分は難聴で補聴器が必要なんだってことを言ったら、それが原因でいじめられるんだってことを。



『なぁ紫杏、本当にここの学校でいいのか? 別に全く耳が聞こえないからといって、普通学校で我慢する必要はないと思うけど』



俺は、紫杏のことをなんとしてでも守りたいと思っていた。

小さい頃は補聴器をつけていて、耳にハンデがあるとしても踏ん張っている紫杏は、俺はあんな奴らよりもよく見ていたから。



『我慢なんてしてないよ。あたしは、ここがいいの』



男子達からどんなに心ないことをされても、紫杏はろう学校に行くどころか、他の普通学校へ転校することもなく、俺と同じ学校に通い続けた。



『あたしは、寛太と同じ学校がいいの』



紫杏は、何度もその言葉を繰り返していた。




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