キミから「好き」と、聞けますように。

あんなことを言っていた紫杏だったけれど、高校では別れてしまった。


というのも、今通っている高校も紫杏は受験したのだけど落ちてしまったからだ。

だから、紫杏は第二希望を受験した高校に通っている。



『あたしは、大丈夫。寛太はいないけど、あれからあたしも、あの男子達とは関わってないし』



紫杏は、相変わらず笑顔を忘れることはなかった。

……ところが、その笑顔を支えるのも我慢の限界だったのか、そっと眉毛を下げた。



『ねぇ、寛太』



声も、その場を寂しく響かせる。



『寛太はさ、どうしてあたしのことをいじめなかったの?』



俺の心に、ぐっと痛みを入れてくる、紫杏の言葉。



『中には、あたしが男子達に補聴器をただのアクセサリーと決めつけてる人の中には、何も言わなかった友達もいた。だけど寛太は違ったでしょ? 補聴器だってわかってると言えど、どうして味方をしていたの?』



そりゃあ俺だって、紫杏の見方をする前から目星はついていた。


紫杏だって女子なんだ。

俺みたいな男子が、女子の味方なんてしたら絶対に冷やかされるって。


だけど、俺はそんな理由があっても紫杏を守る気持ちを捨てたくなかった。


……けど、俺はその時には言えなかった。



『いじめるのはいけないって、分かってたし』



こんなありきたりなことしか、言えなかった。




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