キミから「好き」と、聞けますように。
「兄貴に関しては、なんで毎回そんな反応なんだよ」
「あっ、ななちゃんだ!」
七菜の幼稚園の友達らしき女の子の声がした。七菜はそれに反応して、その子の方へペタペタと走っていく。
「あの女の子とは、なんの進展もないのか?」
「進展がないっていうか……紫杏って覚えてる?」
「ああ、紫杏ちゃんか。その子がどうかしたか?」
俺は、思わず温森を紫杏と重ねてしまったことを話した。
紫杏も温森も昔いじめられていたこと。
難聴を抱えつつ今でもポジティブに生きている紫杏、昔のいじめに思い出すたび不安になってしまう温森。
紫杏を守りたい気持ちから、俺が温森に恋心を抱くきっかけになってしまっているかもしれないことを。
「それさ……お前、もう答えは出てるんじゃねぇの?」
「紫杏ちゃんを守りたいって気持ちから、そのー、温森さん? のことが好きになったってことなんだろ?」
「……そうかもな」
「うん。好きになったきっかけに、『こんなきっかけは恋といわない』っていうのは、本当に恋してなかった時にいうことじゃねぇのか?」
「本当に恋してなかった……?」
「すなわち、お前が温森さんのことをこんなに考えていなかったらってことだよ」