異常な君は、異常なモノが分からない
、決意
「……死後三日経ってたんですって」
「……あらぁ、お孫さんが出て行って、おひとりでしたものねぇ」
「……そう言われたら最近──」
ひそひそ。
ひそひそ。
飽きもせず、白と黒のストライプに囲まれた中で囁き合う黒い大人達。近所の人、ぐらいしか分からないその人達は、作られた言葉と作られた笑顔と作られた同情を持って、目を閉じて箱の中で横たわったままの祖母に花を押し付け帰って行った。
「…………なくなっ、ちゃっ……た、」
僅かな灯り。
しんと静まりかえった実家で、独りごちる。
ねぇ、おばあちゃん。何度呼び掛けても、祖母は返事をしてくれない。
電話をしてきた医者の話では、亡くなったのは折り返せなかった不在着信があった日の夜中だった、らしい。着信は、夕方だった。私が睡魔になんか負けず、ちゃんと折り返していれば、祖母はまだ返事をしてくれたかもしれない。
なんて、そんなたらればを考えたところで、優しかった祖母はもういない。
「……おやすみ、おばあちゃん」
語りかけ、ゆっくりと立ち上がり、部屋をあとにした。