翼をください
頭も良いわけじゃないし、ルックスが良いわけでもない。

面白い事が言えるわけでもなく、中学でも僕の名前なんて知ら
僕は黒板に書かれている席順を見て自分の席に静かに座った。

誰かに話し掛けようなんて思わない。

人と絡んだって…良い事など起きない気がするから。

一人の方が気が楽だ。

中学もそういって過ごしてきたんだ。

だから…彼女なんていたこともない…。シロだ…。


「なあ、お前って早見だよな?」

そう声をかけてきたのはさっきクラスのど真ん中で喋っていた男子だった。

そう…。もう溶け込んでたやつだ。

「そうだけど…。」

僕はものしずかにそう返答した。

何でコイツが僕なんかに?

「今日さあ、合コンのメンバーが一人ドタキャンでさあ、困ってるんだけど…」

まただ…。

何故僕はいつも…あ~もう僕なんてやめだ。

何故俺はいつもこうなんだ。
絡みたくないのに『人数が…』って…。
人数なんて気にせずにお前らだけで行けよ。

『合コン』など所詮そおいう女子しかこないのだ。

そんな場所で運命の出会いなどできるとは思えない。
いや別に運命を信じるとかじゃないけど…どうせ付き合うならって思うだけだ。

当然だろ?


「なっ、早見、頼むよ。」

そいつは手を合わせて俺に頭を下げた。

誰がそんなこと…断る。

と言いたいのだが、
「別にいいけど…」

またやってしまった…。
俺はいつだってそうだ。断れない…。

あ~くそ。俺のヘタレ。

「まじっ?ありがとう~お前は命の恩人だよ~じゃあコレ、俺のメアド。メールして。詳しくはメールで。じゃな~」

そいつはそういってメアドの紙だけを残してまたクラスの輪の中に入っていった。

変な奴…。

俺もじゅうぶん変な奴だけど…。

入学式の日そうそう合コンに誘われるなんて初めてだぞ。

中学③年の時から合コンに誘われ始めたが、それはみんなが『俺は断れない奴』と、そう知っていたからだし…。

俺もただついていって、知らない奴のカラオケ聞いて、ポテトをおごってくれる。

それだけしか考えていなかった。

あっ。そおいやアイツ…名前なんだろ…。

これが…俺とアイツの最初の出会いだった。
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