エリート御曹司は淫らな執愛を容赦しない～初夜に繋がる結婚事情～

「優雅、落ち着きなさい」
「愛菜さん」

私の声に優雅が反応するけれど、いまだ瞳は凶悪なまま、小林くんを射貫いている。
縋るように密着し、上目遣いで優雅を見つめ、私はささやいた。

「私の言うことが聞けないの？　落ち着きなさい」

優雅が唇を噛みしめた。私の腰を強く引き寄せ、髪にキスを落とす。彼なりに怒りを耐えているのだろう。
やがて、優雅は怒りで荒くなった呼吸を落ち着け、平常の様子に戻った。偉い偉いと大型犬でも調教している気分で思う。

それから私は、優雅に腰を抱かれた状態のまま、首をめぐらせ小林くんを見た。

「小林くん、私、少しだけきみのこといいなと思った時期があったわ。でも、間違いだった」

うふふ、と笑って見せる。それこそ、悪役令嬢のように高飛車に偉そうにね。

「みんなの前で悪役に仕立て上げてくれてありがとう。おかげで人生丸ごと間違えずに済んだ。それに、きみじゃ私と釣り合わないわ。可愛い彼女と仲良くね」

言い切ると、私は短い食事会の料金に一万円札をテーブルに乗せ、鞄を手に優雅の腰に腕をまわして寄り添い直した。

「帰りましょう、優雅」
「はい、愛菜さん」

優雅が愛おしそうに私のつむじにキスをする。
私たちは小林くんを置き去りに居酒屋を出た。