エリート御曹司は淫らな執愛を容赦しない~初夜に繋がる結婚事情~
「僕の部屋へ来ていただけますか?」

外へ出て、すぐに優雅が言う。私と目を合わせないので、おそらく先ほどチラ見えした本性の部分を反省しているのだろうと思う。

「お腹が空いちゃったわ。ろくに食べてないもの」
「僕の作るパスタは美味しいですよ」
「それじゃあ、行きます。美味しくなかったら許しません」

そう言って、私は優雅の腕を取り自身の腕を巻き付けた。
普段の優雅だったら、からかうような言葉がいくつか出てくると思っていたのだけれど、彼はしみじみと黙っている。私と腕を組んでいる状態を噛みしめているのか、やはり居酒屋でのことを反省しているのか。

「先ほどはお見苦しいところをお見せしました。申し訳ありません」

優雅がぼそりと言う。

「取り繕ってるよりいいです。結構、血が熱いほうなのね」
「お恥ずかしいです。止められませんでした」
「ぶん殴ってないからセーフよ」

私は景気よく笑ってみせた。
優雅の部屋は駅にほど近い20階建てのマンションだった。この辺りでは高層に分類され、まだ築浅のハイクラスマンション。
最上階の部屋は、ひとりで住まうには広すぎる部屋だった。
さすが御曹司だ。こんなところ、普通の独身は買うのも借りるのも無理である。実家のことは、本人が言わない以上、私からは聞かないけれど。
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