カレシとお付き合い② 森君と杏珠
うつむいてたら⋯⋯ 。
(!)
目の前の机の上には、自然に置かれている森君の手!
こんな近くで見た事ないし。
皮膚も綺麗で、指も長くて、あっ、思ったより丸い爪が清潔そうに整ってる。
でもすごく大きくて骨がしっかりしていて男の人の手だ。
変になってる私の横で、辻本君が正面の席から手を伸ばして紬ちゃんの手に触れる⋯⋯ 。
刺激が強すぎて、私、無理ですって⋯⋯ 。
辻本君の日焼けした手が見えた。
当然、一人一人違う。
辻本君の手の形と森君の手の形、肌の色、爪、長さ。
全然違う⋯⋯ 。
今更のように一括りの『男の人』ではなく、生きている人間なんだなって。
女の子がそれぞれ違うように、男の子だって普通に一人一人違う、生きてる、そうなんだって⋯⋯ 何でこんな時に実感してるんだろ。
黙って机を見ている私に紬ちゃんが気がついて、
「杏ちゃん?大丈夫?」
と声をかけたので、
「あっ、うん、何でもないよ」
と言って、そっと顔をあげたら、正面に私を見下ろすみたいに見ている森君と目が合った。
息が止まる。
うわっっ! 森君だ!
森君は、ゆっくりと優雅に軽く腕を組みながら私だけを見ていた。
じーっと見つめられる。
綺麗な目。
宝石みたい、吸い込まれそう。
なんかキラキラ。
金色の空気に取り巻かれて、魔法みたいに他のすべてを忘れる。
にっこり。
キラキラ。