カレシとお付き合い② 森君と杏珠


「同じクラスだよね」
 

 って彼に話しかけられた。
 
 森君の話す声。
 甘い声。
 私、話しかけられてる。
 
 知ってたんだ、私の事⋯⋯ 。

 私が。
 まさか、森君に認識されてる人だった。
 それだけで、なんか今までの世界と、この瞬間からの世界が変わってしまったような、後戻り出来ないような気がした。


「オレ、森和慎。知ってる? 」
 

うんうん、て慌ててうなずいた。


「私⋯⋯ 」
 

あ、なんか、上手く話せないわ⋯⋯。
これ、どうしよう⋯⋯ 。


「石原杏珠さん。オレももちろん知ってるよ」


かーっと顔が熱くなった。


「これで正式に知り合えたね」


 形よい彼の唇が、ふっと柔らかく(ほころ)んでで、そこから紡がれる甘い声。
 艶のあるチョコレートみたいな目が私を見ている。
 なんか、見たことない熱量を感じる。
こんなの知らない。

 正式に知り合えた⋯⋯ 私と森君⋯⋯ 。
どこにいるのかも忘れて、彼の顔と声とに魅入る⋯⋯ 。
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