カレシとお付き合い② 森君と杏珠
「お前何言ってんの?」
と、辻本君が隣から口をはさんできた。
「紬の友達なんだから、変な愛想ふりまくなよ」
森君は、辻本君を無視してじっと私だけ見ている。
私も彼から目が離せなくて、固まったまま森君を見ている。
「おい!」
と、辻本君が少し声を荒げたので、慌てて紬ちゃんが、
「杏ちゃん?」
と横から肩をたたいた。
パチンと森君と2人だけの空気が割れ散るように思った。
私は彼から目を離してゆっくり紬ちゃんを見た。
金色の残りの空気が粉々に降る、その中で私は激しくドキドキしていて、苦しかった。
上の空のまま紬ちゃんの顔を見た。
まだ森君で頭の中がいっぱいだ。
さっき、私の名をあの声で発音した。
正式にって、なんだろう。
紬ちゃんと話しはじめても、正面に座る森君の事ばかり考えていた。
全意識が森君だけにむいていた。