カレシとお付き合い② 森君と杏珠



 翌朝。

 自分のクラスに入る。
 
 かなり早め、まだ数人しか登校していない。

 だいたい毎朝同じメンバーで、軽く会釈したり挨拶して自分の席へ。
みんなあまり話さない。
 
 整頓や予習をしていたら、だんだん人が増えてくる。

 でも、私の頭の中は昨日の事でいっぱいだった。
『正式に知り合えたね』
 森君と私。

 何度も何度も森君と話した事ばかり考えてる。
 ずっと金色の空気の残りの中で、ふわふわしている気分。

 昨日までとくっきり違う世界。
だって、森君が私を認識している世界になったから。

 私はどうすればいい?
 クラスで挨拶してもいいんだろうか。
 今朝もまだ私は彼と知り合いのままなんだろうか。

 運動部は朝練があるから、ギリギリの時間に連れ立って大騒ぎで入ってくる。
それぞれのクラブで仲が良さそう。

 そして佐伯美香さんが登場。
 数名引き連れている。

 森君も一緒だった⋯⋯ 。

 途端にすーっと気持ちが冷えていくようだった。
 そう、森君はサエキさんといる人だった。
 ふわふわした気分も、金色だった空気も霧散して消えていってしまう。

 カレシのいる親友。
 男の子と寄り道する放課後。
 目の前に座った森君。
 彼の甘い態度。
 サエキさんと仲のいい今朝の森君。
 男女の距離。

 こんな環境で、私はいろんなことをどう考えて良いのか正直分からなかった。

 自分だけが、どうしたらいいのか知らなくて、1人だけ違って受け止めるかもしれない、勘違いしているかもしれない、変な事言うかも知れない。

 森君が私に優しかったと勝手に思ったけど⋯⋯ 。
あれはみんなに平等で当たりさわりのないだけの態度だったのかな。

 私の名前を知ってた森君⋯⋯ 。
クラス全員の名前を知ってるのが普通かもしれない。

 私の存在を認識している森君⋯⋯ 。
認識ぐらい、だれだってするよね。

 彼のいつものスマートな接し方を、皆と同じようにしてくれた。

それを意識しすぎたら変な人みたいだよね。
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