カレシとお付き合い② 森君と杏珠



 今日のHRの時間は、班ごとに話し合い。

 目の前にキュッとした美人な小顔。
 うっ、
 サエキさんと同じ班だった⋯⋯ 。

 サエキさん以外は、おとなしい人ばかりで、座っても誰も口を開かない。

 しーんてなってる。

 最低限の事を決めるのに、仕方なく1人の男子が提案してポツポツと話し合う。

 全く黙っているわけにもいかず、順番みたいに発言するんだけど、いちいちサエキさんが私に対してため息をつく。

 まわりも、いたたまれない雰囲気。

 まぁ、私もイマイチすぎて、この班の人に申し訳ない。

 私は自分の意見を言うのが苦手だ。
そもそも『こうだから』って強く思う事があまりない。
人の意見を聞いたら(あっ、そーかー)とかすぐ思っちゃう。

 共学に来てから、上手く話せない原因の一つだと思う。

 女子校では、女の子だけの中で『そうだよね!』『わかるわかる! 』って、全然困らずにきたから。
何でもだいたいが皆『当然』同じだった。
考え方や環境も似てたのかもしれない。

 外に出てからすごく難しいって思った。
みんなが『当然』だよねーってならない。
 全く思いもしなかった考え方だったり、同じと思っても認識のズレがあったり。

 そんな時に自分の考えがまとまらないし、はっきりないし、人に左右されるし、いつの間にかぼんやり頭の中で考えたりしてしまって、何も言えなくなってしまう。

 聞かれて話すと、質問と答えがズレてたり、皆んなの『当然』と1人違ってたりしてる。

 私はそれで非常識だったり、何言ってんのかわかんない、みたいな反応をされてしまうのかな、とも思う。

 頑張って、ちゃんと考えて、普通に話す! 心がけてるんだけどな。

 班の話し合いが、なぜか寄り道の話になる。サエキさんが言い出したから。

「いつもは、かずまとぉー、」

 はい。わかってます。
 かずまって森和慎君の事ですね。
 わかってるよ。
 やだな。
って、聞いてたんだけど、いきなり、


「石原は?」


って聞かれて、急だったし、あせったし、


「⋯⋯ あまり、行かないかな⋯⋯ ? 」


って答えたら、


「なんで? 」


って言うから、


「校則で⋯⋯ 」
「何? 校則って? 」
「禁止だった⋯⋯ から⋯⋯?  」


 うわ、しまった、地雷か。
サエキさんがすごいイラついてるよ、ひょぇー。


「何それ。私はいい子ですって自慢? 」
「自慢じゃないよっ! ⋯⋯ 事実? 」


 うわっっ、もっと怒らせた!


「じゃ、昨日とかは? 」


 あ、見てたんだ⋯⋯ 森君達と寄り道してたの⋯⋯ だから⋯⋯ 。


「⋯⋯ 」
「石原って、女子校だったんでしょ。
で、私はちゃんとしてるんですって自慢して、寄り道する人の方がいけないんですって嫌味言って、なのにこっそり行ってるんだ。嘘ついて。いい子ぶって。
そういうのってサイテー。
ふざけんな。
調子のんな」
「⋯⋯ 」


 なんか、だんだん口調がキツくなってきたよ⋯⋯ 。
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