カレシとお付き合い② 森君と杏珠
♢
その日、サエキさんが欠席だった。
朝礼の後も来なくて、欠席と分かったらホッと肩の力がぬけた。
周りの子達もヤレヤレってかんじ。
クラスが柔らかい雰囲気になった。
いつになく私語が増えて、私も気楽に近くの子と話せる。
こんなに違うんだな、平和。
人としゃべりながら、また、うっかり森君の方を見たら目が合った。
にっこり。
(! )
とたんに、『正式に知り合い』って笑った彼を思い出す。
あの時と同じ笑顔⋯⋯ 。
いや、ないない。
気のせいだよ!
目があったと思っただけかも。
なんか冷や汗か。
よくわからないけど、汗出てきた。
何してたか全然わからなくなった。
でも、それからも、お昼までに10回ぐらい、目が合った⋯⋯ んじゃないか⋯⋯ 自意識過剰か、私⁈
5時間目の体育の時間。
今、たぶん、森君が隣に座ってきてると思う。
ちょうど男子のサッカーは練習試合みたいなのしてて、森君は.いかにもサッカー部じゃない風情なのに、もう、さらっと上手くて⋯⋯ 。
もうだめだ⋯⋯ 。
私はこの人は当たりさわりなく接してくれてるだけなんだ、とか、
サエキさんと仲いいし、とか、
ちゃんと考えてたのに、もうどうでもいいぐらい泣けるぐらいにかっこいいと思って、
あー、ほんとに素敵な人だなー、とか1人で思ってしまってたところだった。
試合の終わった彼が、キラキラと歩いてる。
金粉が舞う、キラキラと、
歩いて、
えっと、歩いて、
(えっ⋯⋯ )
(どうして⋯⋯ )
(何があって? )
真隣。
私は体育座りをしていたので、膝の上の手にあごを乗せて、うつむいてしまった。
どうしていいか分からなかった。
あんなに気になる森君が、学校で急に近くに来て、そうしたら、どうにも出来なかった。
全身が、隣の森君を意識している。
見下ろされてる、と思う。
視線を感じる。
「サッカーって、楽しいよね」
すぐ近くで森君の声がした。
私か?
ほんとに私に話しかけてる?
違ったら恥ずかしいよ?
恐る恐る横を見上げたら、私だけを見下ろす森君がいた。
か、顔がすぐ近く。
森君の目が私を見ている。
風が吹いた。
彼の茶色い髪が揺れて、触れそうなぐらいに。
森君が、
「サッカー好き?」
ってちょっと声のトーンを落として言った。
何これ?
甘い
甘すぎる⋯⋯ 。
『サッカー好き?』だって。
でも。
もう『好き』って単語、発音できないと思った。
何も答えられなかった。
ただ、息もせず森君を見ていたら、ふっ、と彼が笑った。
優しくて、どうしていいか分からなくなって、彼の笑顔がそこにあって、
にこにこ
キラキラ
森君が男子に呼ばれて、サッカーの方に行ってしまっても、私はその後、ずっと甘い雰囲気にのまれてしまって、キラキラと金色な非現実的な気持ちで、上の空だった。
その日、サエキさんが欠席だった。
朝礼の後も来なくて、欠席と分かったらホッと肩の力がぬけた。
周りの子達もヤレヤレってかんじ。
クラスが柔らかい雰囲気になった。
いつになく私語が増えて、私も気楽に近くの子と話せる。
こんなに違うんだな、平和。
人としゃべりながら、また、うっかり森君の方を見たら目が合った。
にっこり。
(! )
とたんに、『正式に知り合い』って笑った彼を思い出す。
あの時と同じ笑顔⋯⋯ 。
いや、ないない。
気のせいだよ!
目があったと思っただけかも。
なんか冷や汗か。
よくわからないけど、汗出てきた。
何してたか全然わからなくなった。
でも、それからも、お昼までに10回ぐらい、目が合った⋯⋯ んじゃないか⋯⋯ 自意識過剰か、私⁈
5時間目の体育の時間。
今、たぶん、森君が隣に座ってきてると思う。
ちょうど男子のサッカーは練習試合みたいなのしてて、森君は.いかにもサッカー部じゃない風情なのに、もう、さらっと上手くて⋯⋯ 。
もうだめだ⋯⋯ 。
私はこの人は当たりさわりなく接してくれてるだけなんだ、とか、
サエキさんと仲いいし、とか、
ちゃんと考えてたのに、もうどうでもいいぐらい泣けるぐらいにかっこいいと思って、
あー、ほんとに素敵な人だなー、とか1人で思ってしまってたところだった。
試合の終わった彼が、キラキラと歩いてる。
金粉が舞う、キラキラと、
歩いて、
えっと、歩いて、
(えっ⋯⋯ )
(どうして⋯⋯ )
(何があって? )
真隣。
私は体育座りをしていたので、膝の上の手にあごを乗せて、うつむいてしまった。
どうしていいか分からなかった。
あんなに気になる森君が、学校で急に近くに来て、そうしたら、どうにも出来なかった。
全身が、隣の森君を意識している。
見下ろされてる、と思う。
視線を感じる。
「サッカーって、楽しいよね」
すぐ近くで森君の声がした。
私か?
ほんとに私に話しかけてる?
違ったら恥ずかしいよ?
恐る恐る横を見上げたら、私だけを見下ろす森君がいた。
か、顔がすぐ近く。
森君の目が私を見ている。
風が吹いた。
彼の茶色い髪が揺れて、触れそうなぐらいに。
森君が、
「サッカー好き?」
ってちょっと声のトーンを落として言った。
何これ?
甘い
甘すぎる⋯⋯ 。
『サッカー好き?』だって。
でも。
もう『好き』って単語、発音できないと思った。
何も答えられなかった。
ただ、息もせず森君を見ていたら、ふっ、と彼が笑った。
優しくて、どうしていいか分からなくなって、彼の笑顔がそこにあって、
にこにこ
キラキラ
森君が男子に呼ばれて、サッカーの方に行ってしまっても、私はその後、ずっと甘い雰囲気にのまれてしまって、キラキラと金色な非現実的な気持ちで、上の空だった。