カレシとお付き合い② 森君と杏珠
すると、急に、森君が前をむいたまま、
「隣になってよかった」
と、言った。
森君は、私がトナリでヨカッタ⋯⋯ ?
上手く声が出なくて、黙っていたら、
「杏珠もうれしい?」
へ???あんじゅ⁈
今なんて⁈
そりゃ私の名前だけど⁈
いきなり!
名前呼び⁈
驚いて、森君を見てしまった。
えっ、空耳⁈
森君は、
「あんじゅって呼んでいい? 」
とにっこり笑った。
私は思わずあわてて、自分の机の上を見た。
ギュッと握ってる自分の手。
何だか、だからって、どう答える?
『いいよー、よろしくー、かずまー』
でもないし。
『やだー、おどろいたー』
でもないし。
自分の手だけ見て、結局、何も返事出来ない、
そのままホームルームがはじまる。
さっきの森君の衝撃的発言がぐるぐるまわる。
森君の声で《あんじゅ》って名前が発声されて、それを聞いた。
あれ?
ほんとに?
そのうちボーッとしてきた。
「クラスの目標は、仲良くする」
先生の声がする。
高2にもなってその目標。
先生もさすがにサエキさんの事、気が付いてるんだろうな。
サエキさんのグループと思って、あ、森君もか、とつい思って、そっと気付かれないよう目の端で森君をみた。
椅子の背にもたれている。
ただでさえ高校生には小さめな学校の机と椅子。
彼は優雅に座る。
1番後ろの席だからだろうか⋯⋯ 。
森君は悠々と座っていた。
もし後ろに席があったら、後ろの席から髪の毛が触れそうだ、とか思って、そんなことを考えていたら、また、チラッとこちらを見た森君と目が合ってしまった。
うっ、
ぬすみ見ているのが分かったかも⋯⋯
恥ずかしくて、かーっと汗が出そうになる。