カレシとお付き合い② 森君と杏珠



 私は、男の子とカラオケに来たのは初めてだった。
 紬ちゃんも初めて。

 なので2人でこそこそしてしまう。

 ずっと共学でこんな場面に慣れている『黒木まいちゃん』って子に頼る。
 黒木まいちゃんは、紬ちゃんと同じクラスで、サッカー部のマネージャーをしてる。
それがきっかけで、紬ちゃんと仲良くなった子だ。
 私もまいちゃんとは仲良しになってる。
実は、辻本君と森君と同じ小学校、中学校だって。

 カラオケはそれこそ緊張するのでもっと余裕のある時に頑張ってみるから!
 私と紬ちゃんは隅っこで女子トーク。
 そこにまいちゃんも加わる。

 カラオケを無理強いせず「大丈夫? 」と優しくしてくれて、可愛くて仕方ないって感じで見てくれる辻本君て、ほんと貴重だよ。

 よかったね、紬ちゃん。

 強引にマイクを回されたり、無理にカラオケのノリを強要されたら、辛かったと思うし、そんなタイプの人は苦手だな。

 森君は⋯⋯ ?

 カラオケ来てるのに、何してんのって思ってる?
 それとも、辻本君みたいに、かまわないよって思う?

 森君も今は辻本君とボソボソ話しているけど⋯⋯ 。

 迷惑じゃないかな、
 カラオケにきてるのに。

 いつもはただ遠くにいる人、サエキさんの仲間だから、と思って見ていただけだった。
 初めて切り離された1人の男の子として森君がそこにいて、現実に話しかけてきたら、森君がどんな事考えてるのか、彼に私はどんな風に見えているのか気になってしまった。

 私には森君が普段どう感じて、何を考えている人なのか、全然わからなかった。

 それぐらい、彼を知らないんだと思った。

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