カレシとお付き合い② 森君と杏珠
森君は、ふふ、と笑って、私を覗き込んだ。
「じゃ、さ、オレといたらいいじゃん」
とにっこり私の目を見て笑った。
えっ、なんておっしゃった⁈
紬ちゃんも私もギョッとした。
何言ってんの、それは、もう、火に油だし。
森君といつのまにそんな親友になってるのよ私?
だって、今日初めて話をしたぐらいなのに⋯⋯ 。
それに、だいたい森君はサエキさんと一緒にいるじゃない⋯⋯ 。
「私、サエキさんのグループには、入らないよ⋯⋯ 」
とおそるおそる言ったら、
「当たり前だろ。2人で一緒にいよ? 」
「! 」
どう返事していいかわかんなくなり、頭が真っ白になって、紬ちゃんも私も、2人で抱き合いながら、森君をじっと見て固まってしまった。
でも、さすがに彼氏のできた紬ちゃんは、一歩も二歩も、上級者になってた。
紬ちゃんは辻本君を見てから、勇気を得たように、
「森君! いけません! それは。女子からしたら、無理です! 」
と一生懸命にはっきり言ってくれた。
そう無理です! 私、無理です! と紬ちゃんと首を縦にふった。
「大丈夫。
俺、テキトーな事言ってるわけじゃないよ。
本気だから。
ずっとあんじゅの事見てたって言ったでしょ。
気付いてたよね」
⋯⋯ テキトーじゃなくて『ほんき』ってなんだ?
横でまいちゃんが大きなため息をついた。
「で? サエキ無視して動いたって事は、森は考えがあんでしょ? 」
「太陽、同じクラスなんだよ。サッカー部のマネだろ。頼んでくれない? ミカタについてって」
「大丈夫なの? クラス中、巻き込むの? 」
森くんは、また、ふふ、と笑った。
「もう、充分耐えたからね。
昨日、女の子たちがサエキと別れたんだ。仲間と思われたら困るからって」
「はぁ、私でもそうするわ。そんなん。男子は? 」
「カノジョ達にずっと嫌がられていて、このままじゃフラれるって泣いてたな」
「深刻じゃん! もう仕方ないとこまで、来てんだね」
「皆んなも我慢できなくてね、周りとも話してたんだ。
ちょうど席替えもあったから、太陽に話つけたら、こっちはオレがやってみる」
と言ってから、ため息をついた。
「ずっと注意してるんだけどな」
2人は、いったいなんの話?
私のクラスの話?
サエキさんと?
えっ?
紬ちゃんも私も、何かしら不穏な空気を感じて、困ってしまった。
もしかして、グループ内で仲違いしてるの?
まいちゃんはため息をついて、
「杏珠だけじゃないからね。サエキに困ってんのは。去年は同じクラスだった子が不登校になってる」
「不登校⋯⋯ 」
「小学校の時からややこしいんだよ。
辻本と森の言うことはわりと聞くから、余計、変な責任感じちゃうんだろうね」
と言った。