カレシとお付き合い② 森君と杏珠

 それからまいちゃんは、太陽ちゃんに電話をした。
紬ちゃんが、


「太陽ちゃんはサッカー部のマネージャーで一緒なの。先輩の彼女なんだよ」


と教えてくれる。

 サッカー部のマネは、部員が彼女を連れてくる事で知られている。
 まいちゃんは岡本圭太君のカノジョ。
 紬ちゃんも、最初は辻本君が強引に押してマネージャーになって、なんだかんだ言っていたけど、結局今は辻本君とお付き合いして幸せそうだな、とかぼんやりしていたら、まいちゃんと太陽ちゃんが話し始めた。

 大変な時でもひと事みたいにボンヤリしたりするのは、紬ちゃんも同じだ。

 私達は、こーゆー面もイライラされるんだろうな、何だか理解も悪いし、状況も分からないし、人任せみたいで恥ずかしい気がする。

 太陽ちゃんとの話が終わったらしい。


「太陽も私らと同じ小、中、出身だから、サエキの事さけてたけど、まぁ、協力してもらうしかないね」


 私は太陽ちゃんとほとんど話したことが無い。
たまたま縁がなくて、例えば同じ班になった事ないとか、席が近くなったことが無いとか、そんな事で話をするきっかけがなかったかんじ。
 太陽ちゃんもマネだからいつもサッカー部の人と一緒にいる。
うちのクラスはサッカー部は6人ぐらいるのかな、協力? するの? とか考えてたら、


「紬、いいかげんこっちきて」


と辻本君から紬ちゃんが呼ばれた。
 紬ちゃんが真っ赤になった。


「ごめんねー、杏珠も大好きー、」


とか、ひとしきりベタベタしてから、紬ちゃんは辻本君の隣に座りに行った。
 辻本君は、溶けそうな目で紬ちゃんを見る。
 紬ちゃんも。
 もう他のものが何にも見えないみたいに辻本君を見る。

 いいな。
 素敵だな。
と、2人を見てうっとりしちゃう。

 同時にちょっと寂しい。

 隣にいる森君が、


「親友ちゃん、あっちに行っちゃったね。かわいそうに。こっちおいで。オレといよ? 」


と真横からずいっと近づいてきたので、私はあわてて飛び退いて、まいちゃんの横に行ってまいちゃんの手を握った。
 まいちゃんが、ため息をついた。


そのあと帰る時

 辻本君が、紬ちゃんと手を繋いだままだったので、私は紬ちゃんの横にお邪魔虫みたいにいたら、辻本君の横に森君がきた。

 辻本君がいきなり森君に言った。


「お前、まさか紬をどーこーとかは、考えてないよな? 」


 うわ、何なのこのセリフ?
 紬ちゃんですよ!
と、紬ちゃんを見たら、
 (何なのー! )
って紬ちゃんが目で言ってきた
 えっ、でも、森君が? 紬ちゃん? って、急にヒヤッとして、息が苦しくなった。
 2人で不穏な会話⋯⋯ 黙って聞いてしまう、辻本君と森君の話⋯⋯ 。
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