カレシとお付き合い② 森君と杏珠
手をつないで委員会に行ったので、やっぱりギョッとされたと感じた。
委員会中も、隣の森君を意識していた。
手、つないじゃったし⋯⋯ 。
彼が制カバンからシャーペンを出すのすら、なんか気になる。
メモをとる。
ほーほー、こんな字で、こんな風に書く、あっ、こっち見た、うわっ腕時計してる、シャツ!
手首!
手!
腕時計!
落ち着こう、すぐ、こうやって考えてんのおかしいから。
委員会がはじまる。
途中で学祭の意見を求められた。
森君が発言した。
クラスでは森君は自ら発言した事がない。
勉強もすごくできるし、当てられたらさらっと答えるし、いつも落ち着いてる。
でも大人しいんだと思ってた。
今、発言してる森君は、リーダーシップをとったり、こんな風にはっきり、しっかり話すんだと知った。
彼の話が、耳から心に入って、納得させる。
声も落ち着いてて安心する。
学級委員もたぶん生徒会長とかにもなれそうな雰囲気だな。
素敵な人だな。
あっ。違うクラスの人から反対意見⋯⋯ 。
私は人から強く言われたら、あっ、そうかも、とかすぐ思ったりする。
それから良く考えるのに時間がかかる。
1週間ぐらいして、やはりこうだよ! とやっと自分の考えてた事がわかったり、相手の意見のモヤモヤした違和感がなんなのか理解したりする事がある。
そんな時は、すぐにこれが言えてれば、と後悔するんだ。
森君は、すぐにズバッと意見をかえした。
でもごちゃごちゃ言わない。
相手を否定もしない。
言葉数は少なめ。
なのに、そりゃそうだ! とみんなが思うような意見だった。
すごいな。
かっこいいな。
冷静で落ち着いてて、妙に説得力があって、反対意見言ってた人だって、嫌な気持ちになってないと思う。
こんな風に、いい気持ちで、あー納得、って場がなるってすごくない?
しかも何やら甘い雰囲気もしてるよ。
なんの役にもたたず、ただ森君を見てた委員会が終わった。
これ森君鑑賞会かってかんじだった。