カレシとお付き合い② 森君と杏珠


 2人で帰り道に委員の話をしてた時。

 私は珍しく私のダメな事について、ぽろっと言ってしまった。
私は悩みや自分の欠点を、人にあまり相談しないので、珍しい事だ。


「そうなの? 」


と森君が私を見た。

 そうなんです⋯⋯ 。

 私は、特に男の子に話しかけられたり、急に何か聞かれると、ちょうど良い返事が出来ない。
イマイチな事になってしまう。
ほんとに、ささいな事でも。

 今日は、顔見知りのクラスメイト男子に、


「上着暑くない? 」


と言われ、その子は言いっぱなしじゃなくて、どうやら、私が上着を着ている事が良くないと思ってるみたいだし、私の答えを待ってるみたいにされた。


「暑いよ」


と、もう一度言われて、まだ私の答えを待ってる。
 
 『そうだね』でも、『そうかな』でもなんでもよかったんだろうな。

 でもその瞬間は、全然言葉が出なくなって「あーうー」ってかんじになった。
 内心は(うわーっ、いいじゃない、着てたってー)って思ってた。

 まぁ確かにちょっと暑いとかは思ったよ、私も。
 特に何にも考えずに上着を着てたけど、常識的に脱ぐ時期で、おかしかったのか⁈ 私⁈ 変なのか⁈

 その子の求めている答えは『暑くておかしいよね』なのか⁈ とか、もう、グルグルになって、


「暑いです? 」


と間抜けな返事をしたら、相手も、変な顔して、何か、とにかくすごくイマイチだったんだ。

 普通の会話が成り立たないかんじ。

 後からも、モヤモヤと気持ちが残るぐらい、とにかく自分が嫌だった。
 こんな事ばかりなんだ。

 つい、森君にその話をしたら、森君は、


「ふふ」


と笑って、


「そんなのは、お前に関係ない、ほっとけ、うるさい、でいいんじゃない? 」
「えっ、それは無理だよ。そんな事言わないよ! 」


あわてちゃったよ。


「普通に、お天気の会話レベル?
そのぐらいは、ちゃんとまともに話したいと思うの。
みんなは、上手に受け答えができるのに」


て言ったら、何だか嬉しそうに、


「気にするなよ。
オレは、男子とやたら上手に盛り上がる子好きじゃないから」


だって。

 でも、待てよ。
そんなこと言ってるけど、森君こそ逆に女子ともちゃんと盛り上がる男子じゃないか?

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