カレシとお付き合い② 森君と杏珠
「森君はいつも、女の子とも上手に話すじゃない?」
そう言って、ちらっと顔を見たら、
「オレも悩むよ」
って真剣な顔で言った。
「えっ?そうなの? 」
「どう接したらいいか分かんないから、当たりさわりなくしてるだけだよ」
森君でも、そんな事考えてるんだ、と何だかせつなくなった。
「オレが思ってる事言ったら、引くと思うけど聞く?
オレいつも、また来たよとか、しつこいなとか、席立つのうざー、めんどー、とか内心思ってる。
いいカッコしてるだけ、か。
幻滅、されるかな⋯⋯ 」
と、手で髪をかき上げた。
私は心がギューっとなっていた。
森君はそのまま話しを続けたけど、いつもと違っていて、少しぎこちない。
「オレ、ずっと八方美人って、言われてたんだ。
中学で4字熟語習っていたとき、
『八方美人』て先生が黒板に書いた。
みんな、オレを見たんだ。
誰にでもいい顔するって、森のことだって」
と、苦しそうに薄く笑った。
森君のその気持ちが、私の中にもいっぱい広がって、喉や心がぎゅーーってなって、ただ彼を見ながら必死で彼の気持ちを感じていた。