カレシとお付き合い② 森君と杏珠
「オレって、当たりさわりなく接してるだけ。軽薄なかんじなんじゃない? ホストみたいだって言われてる」
「そんな事⋯⋯ 」
私は、何だか心が詰まったみたいに感じた。
森君の苦しさが私も苦しいよ。
いつも上手に人と話してる森君。
その態度に憧れた。
彼の全部を知りたいと思った。
今、森君の大事な気持ちを、彼の口から聞いてる。
本人なりに悩むところがあるんだと思ったら、泣きそうになった。
森君の素敵なところ、本人にわかってほしくなった。
「私いつもいつも、森くんの事すごいなって思ってるよ!
すごく話すのが上手くて、でも皆んなに同じ態度で公平で! 」
でも、私の言葉で逆に森君は自虐的に笑った。
「ただの、いい格好しい⋯⋯ って言われたけどね」
私の感じてる事、森君にちゃんと伝えたいのに、難しい、言葉にするって、って焦った、
「そんな事ないよ! 」
と必死に言った。
「森君、ちゃんと意見があって、それをきちんと話して、人に分かってもらえる。
対立してた相手とだって相手も嫌な気にならず、なんだか気持ちよく、意見がまとまる、皆が一致する、そんな事できるの森くんだけだよ!
私は他の誰よりも、すごいなって思ってる!
やろうと思ったって、できない、森くんのすごいとこだと思うの。
かっこいいな、ってすごく思う」
「本心を見せずに、上辺だけの男なのに⋯⋯ 」
「みんなに本心を見せる必要ある?
森くんは正しくて、公平で、嫌な気をさせなくて、みんなが納得してて、優しくて、何ていうか、、、
そう、すごく、あってるかんじ!
正しいかんじがする! 」
一息に話して、はぁはぁ息切れした。
なんか泣きそうで、ちょびっと涙がじわってした。
森君はしばらく私の目を見てじーっとしてた。
それから、そっと私を腕に抱いた。
髪に彼の唇がそっとあたった。
そして、
「ありがとう」
と低い声で言った。
私はちょっとだけ泣いてた。