カレシとお付き合い② 森君と杏珠


 

 森君の事考えながら歩いて、トイレのドアを開けたら、ちょうど手を洗っていたサエキさんと鏡越しに目が合った。

 あっ、サエキさん!

と思う間もなく、いきなり水道を親指で押さえて、水をかけられた。

 びっくりした!

 それから、あふれるように文句を言われた。
たぶんサエキさん、イライラがたまってたんだろう。
私がなかなか1人にならないし。

 その1人にならないのが、森君と一緒にいたりして、で、言いたい事も積もり積もって。

 サエキさんも森君が好き⋯⋯ なのかな⋯⋯ 。

 そりゃ、一緒にいたら好きになってしまうよね。
 たまらんもんね。あの優しさ。

 素敵だよ、森君⋯⋯ 。

 サエキさんに文句を言われながら、ぼんやり、森君の事をまた考えてた。

 サエキさんとは小学校から一緒って言ってた。
 わがままって言ってた。
 しょうがないな、って。


 2回目の水飛ばされて、かけられて、ハッとした。


「聞いてんの?」


 サエキさんはすごいため息をついた。


「キモいのよ、あんた。
変だよ。おかしいんじゃない?
非常識だし、上の空だし。
だいたい話が通じない。
何もできない、役立たず、むだ、ゴミ、消えろ。
和慎もメイワクだよ」


 グサグサグサ、っと。言葉がささる。
 どこかで、自分でも思ってる事なんだ。
知ってる。
 本当のことだ。

 他の生徒が入ってきて、サエキさんは「消えろ」と行ってドン、と体を当てて出て行った。

 入ってきた人は、ちょっと驚く。
体が当たってよろめいた私。
濡れてる髪や床。
睨んで出て行ったサエキさん。

「変だよ、おかしい、非常識、」か。

 ハンカチで拭いたら、水だったから、何とかなりそうかな。

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