カレシとお付き合い② 森君と杏珠




 最後の委員会。

 森君は今日も元カノと話していた。
ずっと一緒に仕事してた。
 会計の人は、誰も気にしていない。

 それでも今日も森君と帰るのかな。
 約束をしてるわけではないけど、毎日一緒だから。

 好きだから、カノジョになってほしい、だって⋯⋯ 。
「はい」って言ったら、もう森君のカノジョになる⋯⋯ 。

 それで、また、こんな姿の森君を見るの? 私と全然違う綺麗な元カノと親しげに話すお似合いの姿を、どんな事考えて見てればいいの?

 森君にいろんなカノジョがいて、それぞれに親しくて、か。

 ボンヤリ待ってた。
 けど、なかなか出てこない。

 ほとんどの人が帰って、校舎が空っぽになっていく。

 校舎のあちこちの電気が白くついて、入口から外はオレンジ色の電気、入口から右手の方に広がるグラウンドと体育館は煌々と電気がついていた。

 心細い気持ちがふっとよぎった。
 とたんに、外にいて、暗くなってきて、1人で、夜風を感じて落ち着かなくなる。

 (あれ? 
 もしかして、先に帰っちゃった? )

 やっぱ、好きだと言われたのに突っかかるように変な言い方したし、真っ直ぐ受け止めずに嫌な事を言ったのかもしれない。

 だめだな、この人って思われたのかもしれない⋯⋯ 。

 あー、モヤモヤする。

 教室に戻ってみた。
 森君と帰る夕方は、暗くても、夜風でも、全然いい気持ちなのに、今はこんな不安で心細い⋯⋯ 。

 さっき使用していた教室に、電気がついてる。

 他の教室は真っ暗だった。

(森くん?)

 教室をのぞいた。

 2人。

 心がドクン、と鳴った。

 森君と元カノ。
 森君は座っていて、カノジョが森君の首に手を回して⋯⋯ 、

 抱き合ってる⋯⋯ 。

 口から息と一緒に強い痛みが溢れる。
心が痛くなった。

 ガッと何か強い気持ちが押し寄せて、動揺した。

 (分かんない! )

とにかく、その場を逃げた。

 走る。

 駅まで、とにかく走って逃げた。
駅について、定期を出して⋯⋯ 、

 心が痛い。

息できないみたいな気持ち。

 それまでの経緯、至るまでの2人の関係⋯⋯ 。

 携帯が鳴った。
見たら森君からだった。

[どこにいる? 一緒に帰ろう? ]

 なんでもない、いつもみたいに。

 あんな後すぐ、違う女の子にメールする⋯⋯ ?

 そんなの、我慢出来ないよ。
悲しくって、辛くなって、痛くなって、無理だよ。

 森君の事、正しくて、誠実で、きちんとして、優しくて⋯⋯ そんな人だと信じたい。いや、彼はそんな人だ。

 でも、私だけをちゃんと見てくれないと無理だ。

 好意を寄せてる子はみんなカノジョ⋯⋯ 。

 私もカノジョの1人、元カノも、サエキさんも⋯⋯ 。

[帰った]

と送った

 私にはそんな関係、分からない。
カノジョとか。

 苦しくて、いっぱいだ。

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