カレシとお付き合い② 森君と杏珠
大変なこと
♢大変なこと♢



 あちこちの教室で仕事があり、私は会計だから、ずっと生徒会室横の小部屋と、各売り場の行き来だけしてた。

 最後の集計が無事すんだ。


 学祭がおわり、夕方の下校時間が近づいてきた。

 結局、一日中ぜんぜん森君と会えなかった。

 私は学祭の仕事をしながら、ずっと頭の中では森君のことを考えていた。

落ち着いて考えてた、ずーっと。

いろいろ全部思い出してた。

 森君、初めから、ちゃんとはっきり言ってくれてたんだ。

 ずっと私を見てたって。
 サエキとは小学校から一緒なだけだって。
 どんな誤解を受けるような行動もしてないって。

 八方美人だって、みんなオレのことを見た、って、森君のあの時の声。
 いいカッコしいだって、悩んでた彼の話を聞きながら、悩みを分かろうとしてなかった。

 そこが森君の良いところだよって言っておいて、同じ言葉の裏側から浮気と切りつけた。


 私が人の気持ちが分かってなかったのかもしれない。
 ちゃんと自分自身にも向き合うべきだな、私。
 人のことばかり何やかや考えてるけど、結局、自分が自分で分からなくしてる。

 私はもしかして、ほんとに、森君に大事にされてて、彼の告白は本当で、なのに私が一人で思い込んで森君を傷つけてしまったんだ。

 こんな私のこと、まだ好きでいてくれるかな

 昨日の事、ちゃんと話したい

 学内では携帯電話の使用を禁止されてるので、いつも私は朝からロッカーに入れっぱなしにしている。
 午後になっても森君に会えないから、こっそり携帯をポケットに入れかえて確かめたら、森君から連絡がいっぱいきてた。

 昨日、私がトイレに逃げた後も、
[電話していい? ]
って。

着信履歴も数件あった。

朝、
[まだ、学校きてない? ]
[話してね]

 画面が涙でにじむ。
 昨日、あんな風に帰って、携帯も見てなかったのに⋯⋯ 。

 優しい人。

 好きだ、私、森君の事。

[いろいろごめんなさい。
話したいです
会いたいです。
帰り一緒に帰って欲しいです]

そう送った。
 ここに書けない気持ち、全部話したい。
全部聞きたい。


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