カレシとお付き合い② 森君と杏珠


 下校の放送がかかるなか、最後にゴミをもう1人学祭委員の女の子と捨てに行った。

 ほとんどの生徒がすでに帰り、委員の人や一部のクラブ員ぐらいが、急いで帰り支度をしている。

 日がかげってきて、少し肌寒くかんじた。
 赤く夕日に染まる校舎。
 急ぎ足で歩く。

 森君どこにいるのかな⋯⋯ 今。

 この仕事が終わったら。
 森君と会う。


 ゴミ置き場は、校舎の外れの山に面したみたいなところにあり、用務員のおじさんがいた。
 私達はゴミを指定の場所に置いて、急いで教室に戻ろうと元の道を歩き始めた。

 ポケットの携帯が振動した。
 森君かな⋯⋯ 。

 ひとけのない道の向こうから、1人女生徒が歩いてきた。

よりにもよって、サエキさんだった。

 サエキさんは、珍しく大人しそうな、凹んだ表情で、


「あ、石原さん、」


と大人しく話しかけてきた。
 身構える。
 でも可愛い表情だった。素直な。
こんな顔を森君の前でしてるのかな。
柔らかな表情。

 会いたくない人。


「石原さん、ごめんねー。
ちょっと手伝ってもらえないかな? 」


 何のこともなく、普通に話しかけてきた。見たら、何やら荷物をいっぱい持ってる。


「クラスの片付けなの。
だから、石原さんに手伝ってほしい」


 警戒する気持ちはあるけど、全然当たり前の話だし、手伝うべきだよね⋯⋯ 。
委員の子に、


「手伝ってくるね」


と言って別れた。

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