契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
機内での緊急事態
小さな窓からは、綿あめのようなもこもこの白い雲と、その上には真っ青な空が広がる。
アイマスクを外して見えた雲の上に乗っているようなその景色を、私──宇佐美佑華は仮眠から目覚めたぼんやりとした目で眺めていた。
「佑華、起きた? おはよ」
「うん、おはよ」
答えながら、寝入って乱れた肩上ボブの髪を手櫛で整える。
「え、亜紗美、寝てなかったの?」
「うーん、寝ようと思ってたら寝そびれた」
そう言った亜紗美の膝の上には、旅先で買っていた文庫本が置かれていた。
「あーあ、旅行もあっという間に終わりかぁ……」
亜紗美の気の抜けた声に再び小窓の外を眺める。
三泊四日で訪れたのは、一年ぶりの沖縄。
今回は高校時代からの親友、上條亜紗美とふたりきりの女子旅に出かけていた。
亜紗美とは、年に一度以上は一緒に旅行に出かけている。
お互い独身の独り身で、気兼ねなく旅を楽しめるからだ。
「また目まぐるしい日々に忙殺されますな」
ふざけた口調でそう言ってみると、亜紗美は私に合わせて「ですな」と返してくれる。
ちらりと顔を合わせ、ふふっと笑い合った。
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