契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
『では、契約内容を詰めましょう。近いうちにもう一度会うことはできますか?』
ここで返事をすれば、本当に、本格的に、この話は進んでいく。
高鳴り始めた鼓動を感じながら、ふと脳裏に佑杏の言葉が蘇った。
『ひとまずその話に乗ってみるのもいいんじゃないかなって思うよ。私がお姉ちゃんの立場なら、その流れに流されてみる』
〝結婚〟なんてフレーズで尻込みしている部分は大きい。
でも、落ち着いて考えてみれば、契約を確かなものにすれば私にとってマイナスになることは何ひとつない。
流されて……みてもいいのかな……?
あの日、桐生さんに言われた『人助けだと思ってもらえたら』という言葉と真剣な眼差しが、とどめのように私の背中を押す。
「……わかり、ました」
私からの返事を聞いた桐生さんは、電話の向こうでまた『良かった』と微かに笑ったような気がした。