契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
感情を伴わない契約夫婦



 六月下旬。

 今日は休むことなく、朝から弱い雨が降り続いている梅雨らしい空模様の一日。

 急なお産が入ることもなく、引き継ぎをして上がった十七時過ぎ。

 更衣室に入りロッカーにしまっておいたバッグからスマートフォンを取り出すと、通知に桐生さんからのメッセージを見つける。

【病院前の道に停車してます】

 そう入ってきていたのは十二分前。

 私が十七時上がりと聞いて、ちょうどその時間に到着するように来てくれたようだ。

 慌てて白衣から私服へと着替え、バッグからポーチを取り出す。

 電話で契約結婚を承諾したあの日から、かれこれ約一か月。

 互いのシフトと個人的な用事を摺り合わせると、上手く予定が合う日が大分先になってしまった。

 この間、メッセージアプリでのやり取りは何度かしたものの、桐生さんと実際に顔を合わせる機会はなく、私は相変わらず日々の忙しさに追われていた。

 日に月に契約結婚の話に緊張していたことも徐々に和らいでいた今日この頃だったけれど、昨晩入ってきたメッセージで気が引き締まった。

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