契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「あっ……」
そこから顔を見せたのはやっぱり桐生さんで、思わず足が止まる。
小雨が降る中降車してきた桐生さんは、私を見つけて降りてきてくれたようだった。
こっちに向かって手招きをして、助手席側へと回る。
もたもたしていたら桐生さんが濡れてしまうと思い、小走りで車へと近づいた。
「こんにちは、わざわざありがとうございます」
「乗って」
「あ、はい」
急いで傘を閉じ、開けてもらったドアから助手席へと乗り込む。
「すみません、傘、どうしよう」
「預かるよ」
濡れた傘をこんな高級車に持って乗り込むことに抵抗を感じておろおろしていると、運転席に乗り込んできた桐生さんは私の手から傘を抜き取る。
傘を持つ私の手にほんの一瞬桐生さんの手が触れて、それだけでどきりとしてしまった。
そんなことに気を取られているうち、預かられた傘は後部座席の足元へと置かれる。