契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました


 桐生さんがふたりの条件を加味して用意した住まいのマンションは、湾岸エリアの高級マンションが立ち並ぶ、その中のひとつのタワーマンションだった。

 最寄り駅からも徒歩数分と交通の便はとてもいい。

 桐生さんも羽田空港までの通勤の便がいいのだろう。

 車はマンション敷地内に入っていくと、エントランス近くの車寄せで停車する。

 運転席を降りた桐生さんは助手席側へと回り、わざわざドアを開けにきてくれた。


「車は、ここで?」

「あとはパーキングサービスの人間が入れてくれるから大丈夫」


 車寄せのスペースは屋根もあり濡れずに降車ができる。

 新居となる場所がこんなサービスの行き届いたマンションだとは思わず、到着早々圧倒されてしまった。

 桐生さんに続いて重厚なエントランスを入っていくと、そこはもうホテルと錯覚してしまうエントランスホールが広がっていた。

 佑杏が住む低層タイプの高級マンションも、初めて訪れたときは豪華で驚いたけれど、このタワーマンションも負けず劣らず。

 本当にここに住む予定の部屋があるのかと疑ってしまう。

 上背のある桐生さんを見上げて、契約結婚の話自体が本当の話なのかと、今更そんなことをぼんやりと考えていた。

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