契約結婚ですが、極上パイロットの溺愛が始まりました
「部屋は、三十五階。そうだ、これ渡しておく」
「カードキー、なんですね。すごい」
しかし、半信半疑の気持ちは着実に現実だと証明されていく。
天井の高いエレベーターホールに入ると、二基エレベーターが向かい合って合計四基のエレベーターが用意されていた。
その一つが一階で待機していて、乗り込むと桐生さんが思い出したようにカードキーを私に差し出した。
「ここはコンシェルジュも駐在しているし、セキュリティ面では女性にも安心できる住まいだと思う」
「すごいですね……コンシェルジュ付きマンション……」
エレベーターは音なくあっという間に三十五階へと到着する。
桐生さんについて向かった部屋の玄関扉が開かれると、その先には白く清潔感溢れる広い玄関が出迎えてくれた。
床は大理石。真っ白な壁は天井までが収納になっているような造りで、その一部は巨大な姿見にもなっている。
玄関だけですでに気後れしそうになって、扉を開けたまま私が中に入るのを待つ桐生さんが横でふっと息を漏らす。
「どうした?」
「あ、いや、すごい部屋だなって思ったら緊張してきまして」
正直にそう言ってみると、桐生さんは今度はふっと笑う。
「これからここに住むんだから、慣れないと」
「そう、ですね……」
それでもつい「お邪魔します」と言って中に足を踏み入れた私を、桐生さんはまたくすりと笑った。